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小梅(石川瑠華)は海辺の田舎町にくらす中学二年生の少女。先輩の三崎(倉悠貴)に告白するが、手酷く振られてしまう。傷ついた小梅は、1年前に告白してきたけど振った相手・同級生の磯辺(青木柚)を誘って肉体関係を持ってしまう。磯部は今でも小梅が好きだというが、小梅には磯部と恋人同士になる気はまったくない。しかし、何度も関係をもってしまう二人。小梅は次第に磯部に対して独占欲を抱くようになっていく。だが、磯部の方は自殺した兄への罪悪感から兄の幻影に囚われていき、小梅を拒絶してしまう。ショックを受けた小梅は、また三崎に近づくが性行為を強要されそうになり、磯部のところへ押しかける。しかし磯部はそんな小梅を突き放し…。小梅に片想いしている鹿島や、そんな鹿島に好意を寄せる佳子。少年少女たちの繊細で残酷な恋と性を描き出す。

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舞台となるのは海辺の小さな田舎町、8月に突入しても観光客やサーファーの姿は見当たりません。人気のない波打ち際をあてどなく歩く水着の少女の後ろ姿には、早くも夏の終わりの物悲しさを感じてしまいました。浜辺でキラリと光るのは貝殻かと思って拾って見てみると、SDカードだったいうのも色気もロマンもないエピソードですね。どこからか聞こえてくるのは日本語ロックの先駆け的な存在、はっぴいえんどのヒットナンバー「風をあつめて」。1970年代の懐メロと、2010年代のメモリー媒体とのミスマッチが冴えわたっています。好きな音楽の話題で盛り上がっていたカップルの仲が、カードの中に記録されていた1枚の写真から引き裂かれていく展開が切ないです。

ヒロインの佐藤小梅には石川瑠華さん。見た目からして奥手な女子中学生かと油断していると、SNSを通じて同級生に過激なメッセージを送ってしまうもうひとつの顔を持ち合わせていますよ。時にピュアに、時には妖艶に変貌を遂げていく彼女の多彩な表情に注目してください。相手役の磯辺恵介には青木柚さん、映画の序盤でこそ小梅に振り回されていますが両者のパワーバランスを逆転できるのかが物語の鍵になっています。ふたりの間に強引に割り込んでくるのが、「小梅の幼馴染」をやたらとアピールする鹿島翔太。兄・弟のお笑いコンビや子役のイメージが強かった前田旺志郎さんが、本格的に俳優業にチャレンジしているので必見です。若手の役者たちのフレッシュな演技が目を引く中でも、磯辺の父親に扮した村上淳さんの存在感は流石ですね。

原作を読まないまま、映画を見てしまったのですが、本当にとても面白かったです。思わず、原作も読んでみたくなりました。中学生の甘酸っぱい恋の模様や、痛々しくも青く暗い感じが存分に詰まっていたと思います。特に、嵐の中で行われる文化祭のシーンは必見です。小梅が「風をあつめて」という曲をリクエストするのですが、その曲のゆったりとした感じが台風の激しさと対比していて、見事なコントラストになっていました。あのシーンは、この映画の1番の見どころにもなっていると思うので、ぜひ見てみて欲しいです。また、小梅と磯部を演じた2人の俳優さん達の演技も、白熱していて良かったので、ぜひ彼らの演技にも注目して見て欲しいと感じました。

注目キャストは、まず主人公の小梅を演じた石川瑠華さんです。体当たりな演技も多かったのですが、堂々と見事に演じ切っていて魅了されました。最初は中学生役に違和感を持ってしまったのですが、どんどん彼女の魅力に惹き込まれていった感じもあります。とっても演技が上手かったです。きっと、これからブレイクする女優さんになると思うので、ぜひ注目して見て欲しいです。また、磯部を演じた青木柚くんの演技も凄かったです。兄の自殺を悩んでいるという少年なのですが、その葛藤の様子が痛いほどに伝わってきました。ちょっと闇のある感じも怖さがあって、見ていて迫力がありました。彼も今後、絶対にブレイクしそうな予感があります。2人以外にも、若手俳優たちの迫真の演技がたくさん見られるので、とにかくオススメです。

設定としては中学生たちの物語ですが、内容がかなりアダルトなために出演者の年齢がやや高く、高校生に見えてしまいましたね。役者の見た目の問題は脇に置くとして、思春期の初め、まだ恋愛が何かよく分かっていない少年少女たちが精神的な不安定さから性行為を行ってしまうものの、それによってさらに感情が乱れてゆく様が描かれています。そんな少年少女たちの揺れ動く心を、独特の雰囲気でまとめた作品だなと感じました。好きという感情が本物なのかどうかで手探りで確かめてゆく作業。それが大人への階段を登る行為なのだとも感じました。特に最後の方、海岸でメモリーカードを探す場面の美しい光景が印象的でした。まさに「うみべの女の子」でしたね。

石川瑠華さん演じるヒロインの佐藤小梅。見た目と雰囲気に釣られて性格を見極めることなくチャラい先輩の三崎を好きになり、性的な行為を受け入れるものの、先輩の側は彼女のことを好きではなく、ただ体を弄ばれただけたという残酷な結果に直面します。何だか世の中にたくさんいそうなタイプの女の子だと思いました。その後、自棄になって自分に好意を抱いていた同級生の磯辺恵介と偶然も重なって体の関係を持ってしまいますが、そんな関係を続けてゆくうちに彼にも複雑な感情を抱いてしまい、「うみべの女の子」のことで妬みの気持ちが生まれて精神を乱れさせてしまうところ。女性は感情の生物だと言われることがありますが、そんな部分が体現されているようにも感じられましたね。

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