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高層マンションが立ち並ぶ中、ひっそりとたたずむ平屋の家。そこに暮らすのは治(リリー・フランキー)と信代(安藤サクラ)の夫婦、息子の祥太(城桧吏)、信代の妹の亜紀(松岡茉優)、そして初枝(樹木希林)の5人。治たちは初枝の年金を使って生活しており、足りないものは家族ぐるみでの鮮やかな連携プレーでの万引きで補っていた。子供も万引きしなければ生きていけないような底辺の暮らし。でも治たち家族はいつも笑顔で仲良く楽しく暮らしていた。そんなある日、治は冬の夜に外で一人凍えている少女・ゆり(佐々木みゆ)を見つけ、家に連れ帰ってしまう。よく見ると傷だらけのゆりを見かねた信代は、ゆりを娘のりんとして一緒にくらすことに。時は流れ、相変わらず一家は仲良く暮らしていたが、ある事件がきっかけで家族が抱える秘密が明かされ、家族はバラバラに引き裂かれてしまい…。

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アカデミー賞にノミネートされた話題作だったので興味本位から見始めたのですが、本当に考えさせられる良い映画でした。治役にリリーフランキーさんをキャスティングしたプロデューサーは本当にセンスの塊だと思います。初枝の年金目当てに共に生活をして不足分を万引きで食い繋ぐ展開は本当に殺伐としてますね。この万引きの場面のスリリングさときたら、初めての感覚でしたね。子供と合図を交わしながらミッションを遂行していく感じが見どころですかね。やはりリリーさんのミステリアスな雰囲気が遺憾なく発揮されていたかと思います。貧困に苦しんでいる人々は今の世の中にも必ずいるわけで、そういう人たちのことを少しでも考えるいいきっかけになるような名作ですね。

一番はやはり主役の治を演じたリリーフランキーさんです。今までリリーさんの演技は結構見てきたのですが、この作品は群を抜いて良かったです。目の奥の演技が本当に何を考えているのかわからない感じですごかったです。それからやはり初枝を演じた樹木希林さんの存在も外せません。この作品が確か遺作になったかと思うのですが、本当にそれに見合うだけの演技を体全体で表現していたかと思います。樹木希林さんの何がいいのかというと、やはり彼女が持つオーラと声色ですね。視聴者の胸にずしんと沁みてくる声が感動を煽ってくれます。物語のテーマは非常に重たいものなのですが希林さんがいることで微かな救いのようなものを感じられるので本当にすごい存在感です。

なんとも複雑な想いが、込み上げてきました。血のつながりのある家族、そして、血はつながっていないけれど家族のように暮らすくらし。どれが幸せな家族なんだろうかと考えさせられました。血がつながっている実の家で暴力を受けるなら、その暴力から救ってくれる他人と暮らした方が幸せなのではないだろうかと思うけれど、お金が十分ある家であれば良かったのに柴田家にはお金がなく、万引きなどをしている家庭であり、とても良い環境とは言いきれない。もし私が凛だったら。もし私が柴田家の一人だったらと考えてみるものの、難しさを感じました。この作品は人間の汚い部分さえも見せてくれているので、それがリアルな世界を表現してくれていて、すごく良かったです。

注目キャストは、安藤サクラさんです。安藤サクラさんは、日本が誇る本当に素晴らしい女優さんだと思います。凛とした美しさと柔らかさや、あたたかさがあり、安藤サクラさんの演技一つ一つには、魂がこもっているのを感じますし、言葉のないシーンでも、安藤サクラさんの表情で、きっとこう思っているのではないかと思えることができます。なので、この劇中での柴田信代の表情も涙も、ものすごく心が突き動かされました。この柴田信代を演じるのが安藤サクラさんでなければ、あの柴田信代に出会うことが出来なかったんだなと思うと、とても素敵なキャスティングだったなと思いますし、この作品での安藤サクラさんの存在感は、かなり大きなものがありました。

パルムドール賞を受賞して話題になったことから、鑑賞しました。実話を基にした作品と知り、びっくりしたのを覚えています。タイトルを見て、犯罪をしている家族だとばかり思っていました。犯罪自体は悪いものですが、犯罪を犯し続けてしまうにも理由があって、共感できるものもありました。しかし、偽物の家族であっても、本物の家族以上に家族のような絆で繋がれていて、羨ましく感じました。現代のニュースで、家庭の困窮を理由にして、犯罪に手を染めてしまうケースは少なくありません。そのニュースを見るたびに心が苦しくなりますが、だからと言って自分ができることも思いつかずモヤモヤしています。しかし、今の生活がもし何らかの理由で崩れてしまった時、自分にも起こりうることだと思います。そんな時でも、今の家族と同じように笑顔で楽しく生活できるかといったら、そうではないと思います。この作品に出てくる家族は、どんな状況に置かれていても、家族は家族だと教えてくれました。日常で汚れた心があらわれる作品です。

この作品で一番注目していたのは、祥太役の城桧吏さんです。子役として経験もない中、この作品のオーディションで出演を勝ち取ったと知り、演技を見るのが楽しみでした。祥太の持つ哀しさが十分に出ていて引き込まれました。この作品ではキーマンになっていて、父と共に万引きをするなど犯罪を犯しながらも、りんの本物の兄としての葛藤を描いていました。この作品で花開いた俳優さんの1人だと思います。
また、安藤サクラさん。元から大好きな女優さんでした。祥太たちの母親として、パートをしたり、工場で窃盗を繰り返したりと、”生きる”ためにこの家族にとって必要なことをしている姿に胸打たれます。妻として、母として、家族の中心となって、身を粉にしている様子は、悲しくなりつつも、ある意味かっこいいなと思えます。

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