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首を絞められて殺されたうえに、顔をつぶされ指まで焼かれた男性の遺体が発見される。捜査の結果、遺体は無職の富樫慎二であることがわかる。貝塚北警察署の刑事・内海薫(柴咲コウ)はさっそく富樫の元妻・花岡靖子(松雪泰子)のアリバイを調べることに。すると靖子はその日は娘と二人で映画に行っていたと供述。薫が靖子に話を聞いていると、靖子の隣人・石神哲哉(堤真一)が湯川学(福山雅治)と同じ、帝都大学出身であることを知る。湯川に石神の話をしてみると、湯川は石神を本物の天才だと賞賛する。しかし、石神は現在は高校の数学教師をしており、生徒からの人気もなく冴えない日々を過ごしていた。内海から事件の話を聞いた湯川は、事件の背後に石神の存在があるのではないかと考えるが…。果たして湯川は天才数学者が仕掛けた難問を解き明かすことができるのか。

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今までかつてここまで切ないガリレオがあっただろうか。キャスト、ストーリー、演出、全てが完璧で切なくも悲しい物語を彩っていました。恐らくストーリーの構成とゲストの存在感が大きすぎて、主役の福山雅治と柴咲コウかあまり印象に残っていないくらい、それくらいとにかく堤真一と松雪泰子が良かった。自分の人生の幕を閉じようとしていた堤真一演じる天才数学者石神の元に、ある日松雪泰子演じる花岡とその娘が隣に引っ越してくる。なんとなく印象的だったのが花岡の娘が友達と歩いているところに偶然石神が通りかかり、身なりのキレイではない石神に対してなんの嫌悪感も抱かず遠くから明るく声をかけ、友達には「お隣さん」と紹介。嬉しがることも恥ずかしがることもできずただ戸惑いながら片手を控えめに挙げる石神。そんな些細なことで今まで白黒だった石神の人生に色が咲いていく…。映画の中にはいくつかそんな場面があり、積み重なることで罪を重ねる石神をなんとなく許してしまう、そんな気持ちで観ていました。結局石神も罪がない人間を一人殺していることになるので刑務所行きは免れないのですが、なんとか石神の思惑通り花岡母娘を助けることはできないか、そう願ってしまう物語でした。

なんと言っても堤真一です。今まで彼の出演するドラマはいくつか観てきましたが、今回の演技力、役に入り込む力に驚きました。髪はボサボサで身なりも清潔感がなく、なにより猫背で独特の野暮ったい歩き方で「人生に興味のない天才」を表現していました。目もうつろで虚無感しかなく、自殺しようと首にロープを巻き椅子に乗った姿を見て妙な納得感があったのを覚えています。そんな彼が花岡母娘と出会い、無垢な優しさや明るさに触れることで人生に少しずつ意味を見つける様子が心に沁みました。母娘を守るために結局人を殺してしまう彼ですが、恐らくどの視聴者も石神の思惑通りにことが進み、悲しいけれども母娘を守れるように…でも彼だけが犠牲になるのは…という複雑な感情を持ったのではないでしょうか。それくらい惹き込まれる演技でした。堤真一の代表作のひとつになったのでは、というくらいハマリ役でした。

容疑者Xの献身は好きすぎて3回観ました。容疑者Xの献身は、物理学というよりも本当の愛とは何かというものがメインに感じました。松雪泰子さん演じる花岡靖子のその優しさや笑顔だけで、殺人犯となりきった堤真一さん演じる石神哲哉の気持ちが強く伝わってくる作品でした。主題歌である最愛とは何か。というのがこの作品に全て詰まっています。冷静沈着な湯川先生が事件の謎が解けた時に、内海刑事に対して「友人として聞いてくれるか」と言った時に、湯川先生の人間らしさが出ていてとても印象に残っています。最後がどうなるかなと思ってましたが、花岡靖子が自白して、それまで冷静だった石神の感情や表情が崩れる瞬間に涙が出ました。恋した時に最愛とは何かというのをこの作品に出会って、とても考えるようになりました。

福山雅治さん、柴咲コウさんの演技力は、もちろん凄いのですが、今回の演技に1番注目してもらいたいのは、堤真一さんの演技です。自殺をしかけていた石神の表情から松雪泰子さん演じる花岡靖子と出会って恋が芽ばえた後のちょっと明るくなった表情そして殺人犯となってしまったあとの覚悟と強気な表情、そして1番凄いと思った最後の湯川先生と話しした後に花岡靖子が警察に出頭してきた時の泣き崩れた瞬間の表情の違いにとても驚きました。ドラマとは思えませんでした。堤真一さんは本当に凄いと思います。福山雅治さんも普段の冷静沈着な感じから、自分の友人が殺人犯になったと発覚してたからの感じが細かな動きや喋り方で表現されていて、凄かったですし、とにかくかっこよかったです。

天才物理学者と天才数学者が相まみえるというの感じが凄く良かったです。これまで湯川は天才物理学者と呼ばれるだけあり、数々のトリックを暴いてきました。でも本作のトリックを仕掛けたのは、湯川の大学生時代の友人である石神。物理学と数学と方向性は違えど、両分野の天才の静かな頭脳バトルというところが良かったです。あとトリックに関してですけど、私的には意外でした。石神と湯川が海沿いを歩いている際、浮浪者達が暮らしているところを通りました。最初はただの一風景って思ってたんですが、まさか殺人を隠すために浮浪者の一人が犠牲になっていたとはとビックリ。もしあの時石神と湯川が浮浪者達の住処を通りがかっていなかったらトリックは解けていなかったかもと思うとゾワゾワ来ました。

石神哲哉が今回注目のキャストでした。高校で数学を教えている教師ですが、授業態度を見る限りはあまりやる気は感じられません。無気力な教師という感じでしたが、まさか大学時代には湯川とタメを張る程の天才っぷりだったとは驚きました。最終的に湯川に犯罪トリックを暴かれてしまいますが、もし殺人が突発的に起きたものでなかったらどうなっていたかわからなかったと思います。
次に本作のヒロイン的な役柄となった花岡靖子も魅力的でした。子育てをしながら弁当屋をオープンさせるとか、なかなかのやり手。見た目が美人ですし、お客様に対する愛想も良し。接客業のプロという印象です。ただ元夫のせいで不幸な目にあいますけど、この女性には幸せになって欲しいなって感じさせられました。

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